こんにちは。
万年平社員、実習指導者のかづおです。
とうとう「スーパーバイザー」になってしまったSTのアナタ様。

緊張しますよね!
誠実なSTほど、緊張したりします。
きっと「実習生にちゃんと教えられるかな…」なんて。まぁ肩の力を抜いてください、大丈夫ですよ( ̄ー ̄)vv
教えるというよりも『成長をフォローする』という考えです。
そんなわけでここでは「バイザーが意識しておくと良い実習生との接し方」のお話しになります。
【言語聴覚士】実習生への接し方「まえおき」
老子の格言で『授人以魚 不如授人以漁』という言葉はご存じでしょうか?
実習生さんらは学校教育を通じて、数々のことを学んでいきます。私たちもそうでしたよね。
バイザーがすることは、基礎的な教育というよりは、現場レベルの空気感を伝えていくことだと、私は思うのです。
まぁ、なかには「ホントに学んできたん?」などと疑問を感じる実習生もいます。

こまった生徒だな、中止にするか…。
でも、本当にそれでいいのでしょうか?
私としては実習生の動機や姿勢を眺めながらほうが、気持ちよく実習を過ごせると経験しています。
従って、バイザーがやれることは”割と少ない”かも知れません。
実習生との関係性にむけて
さて、実習を通して学習が進んだ!と感じられた生徒のほとんどはこう言います。

バイザーとの関係が良かった!
このこと、ご自身も経験されているハズ。
実習を研究した文献でも、バイザーとの関係性によって実習の出来栄え(成功体験)を決定するといわれています。
実習生の「やる気傾向」って把握していますか?
外交的、内向的、具体的、抽象的、回避フォーカス、獲得フォーカス…。
巷にはメチャクチャたくさんの「教育フレームワーク」があります。なんとなくでも知っておいた方が得です。
私個人はざっくりこの4つで考えます。
- STになりたくて来た人
- 進路の関係でST養成校に入学した人
- 医療職という安定性から資格取得に来た人
- イヤイヤながら実習に来た人
STになりたくて来たひとは言うまでもないですが、そうでない生徒との間では『欲求水準に差』があります。
これを「やる気の差」だと考えるようにはしません。

人それぞれの人生があるからです。
「この実習生は何故ここにいるんだろう?」と考えるようにしています。
「実習生なんだからしっかり!」といったフレームで接してしまうと、実習生のモチベーションはおろか、バイザーとしての時間も削られかねません。
成長する人は自ら進む、逆にそうじゃない人は?
ひとの「成長意欲」には2通りあるといいます。
- ①:獲得フォーカス
- ②:回避フォーカス
獲得フォーカス
高いレベルの成果を出したいと考えている。
回避フォーカス
安定感や信頼性を重んじる。

実例を2つ、ざっくりと挙げます。
①:とあるミドル層女性のケース
その方は自身の年齢と将来性を鑑みて、STに就いた後にビルドアップする気はないといった様子でした。
これは「回避フォーカス」の傾向です。
②:かの名門、北里出身の実習生ケース
レポートよし、発表よし、むしろ私が教えてもらいたい…。嫉妬したとは言わない。
こういう人は「獲得フォーカス」だと考えます。
各々に適した「本質的な指導」とは?
この2つはざっくりとした例ですが、教育方針の目安として知っておいてください。
実習生は基本的に、みずから成長する存在だということ。
バイザーはそういった相手の傾向をつかみ、その人に適した「成長の場」を提供するのが、指導の本質なのではと考えています。
さて、つぎから実践編です。
「成長の場」を提供する接し方とは?【具体的に解説】
ここからはバイザーとしての実践編です。わたしは指導の本質を「成長の場の提供」だとお伝えしました。
その「キーワード」はこの4つ。
- 傾聴
- アウトプット
- 心理的な安全性
- 否定しない
「アウトプット」の重要度を考える
成長の場とは、実習生の好奇心を引き出す場所だと、私は考えています。
実習生はいま現場にいます。
目を開けば患者に医療スタッフ、耳を澄ませばステーションに響くアラート音。鼻を利かせば、バルーンの臭い。
なにもかもが刺激的です。
それだけで十分なほどの経験をインプットしています。
そのインプットをいかに実習生(その人)らしくアウトプットさせてあげられるか?だと考えています。
実習生が行う「アウトプット」は、3種類ほどでしょうか。
- 口頭での会話(患者&スタッフ含め)
- デイリー&学校用レポート
- 症例発表

このほかにも有るとかおもいます。
レポートと発表は慣れが必要ですので、ここでは重視しません。添削をくわえていけば良しとします。
実習生のアウトプットを「聴く」重要性
とかく「口頭伝達力」はST業務のキモですし、重視してさしつかえはありません。
ですが実習生には、口下手な人もいます。メモとか全然取らない人や、何をいっても「分からない」の一点張りの人もいます。
そんな姿を見ると感情的になります…。

ですが、指摘する必要はありません。
そういうケースではこちらが、”表情をゆたか”に聴く姿勢を保つこと。そしてクローズドな質問をしてみてください。
「○○さんの評価よかったよ」
「あのときどういった工夫をしたの?」
やりがちなのが「今日どうだった?」です。
これだと質問の範囲が広すぎて、実習生は返答につまります。
聴くという姿勢は、シンプルで効率的な指導法なのです。
「このひとは聴いてくれる人だ」と感じられただけでも、実習生の緊張はほぐれ、”心理的な安全性”が確保されます。
心理的な安全性は「成功体験」につながる
「このバイザー先生は目くじらを立てず、はなしを聞いてくれる人だな…」
やる気のなさそうな実習生でも、接する相手の言動からこころは動くもの。
実習生側からしたら、聴き入れられた!という気持が「心理的安全性」になり、間違ったとしても大丈夫かも!という精神になります。

その精神が成功体験になる。
逆に事あるごとにアドバイスしたがるバイザーは、実習生にとって一方的な関係になりがちです。
聴く姿勢は「レポート」にも応用できる
文字表現がニガテな実習生もいます。かくいう私もガチンコで苦手でした。マジで。

今でもニガテですが…。
私が実習生のころ、臨床実習のバイザー先生は、私のいたらないレポートを「書けているね」と、丁寧なことばつかいで、提出する度に褒めてくれました。
文字数がすくなく明らかにずさんな評価レポートであってもです。
私はそれを伝えられる度に、書けるようになろう…!と、どんなに眠くても自分の努力と向き合うようになりました。
あとでバイザー先生が教えてくれたのですが、まったく書けない実習生にはほとんどを望まない(期待しない)といわれました。
そういった人には、その人なりの将来性や、考えがあるから、私はただその人に合わせているのだと。
「書けない、提出できない…」という実習生であれば、口頭でのやりとりをレポートに書いてもうなんてことも想定します。
そのほうが実習生としても書きやすいでしょうし、こちらとしてもレポートさえあればF.Bで添削できます。
レポートは「観察・評価・治療、自己態度」などの添削、口頭では「傾聴」という使い分けもできそうですね。
傾聴姿勢だと実習生の「意見」を受け止められる
見当違いな評価や、明らかな誤りはかならず出てきます。
仮にHDSRを取ろうとした理由は?と質問してみたらこういった返事が来たとします。

何となくそう思った。

エレガント!笑
(やる気あんのかぁ…!?)
むかつく…返答ですが、一旦は受け止めてください(汗)
「そういう風に考えてみたんだね」
「その考えに至った理由を訊いてみてもいいかな?」
などと受けとめてから、相手の考えを再度「質問~リスニング」します。
指導者にとってはトンデモ意見でも、実習生にとっては振り絞って出した見解(価値観)かも知れません。
ちなみに私のバイザー先生は学生時代に、嚥下の根拠を尋ねられた際に『わたしの考えこそが根拠です!』と言い張ったようです(笑)
ようするに、聞き手の尺度で「即時的」に判断しないようにしてください。
実習生のアウトプットを遮断すると「否定」が生まれる
明らかな誤りだからと反論的に話しを遮ってしまうと、ある種の『否定』が生じます。それが親切心であったとしてもです。
実習生は否定を感じると、次から相手の顔色を窺うようになり、バイザーにとって都合のよい意見ばかりを伝達するようになります。
これではリハにおける発想や発見、成長のキッカケを封殺しかねません。

なんでも言える状態こそ「成長」です。
勉強不足だとか、そんなこともできないの?ではなく、ガチガチな緊張下で実習生は精一杯やっているんだという温かいこころで接します。
その後、実習生にはレポートを提出してもらい、そこで笑いながら鋭く訂正を施してみてください。
お互いにたいへんではありますけどね。
本記事を書くうえで参考にした書籍
ここまでおつかれさまでした。
何だかんだであっという間に過ぎる実習期間なので、振りかえると「あーしておけば良かたっかな~」とか出てきます。
すると、参考書なんかが気になったりします(笑)
それではこの記事を書くうえで参考にさせていただいた本を紹介して終わりますー。
ではー。