こんにちは。
万年ヒラSTのかづおです。
新人だったあの頃、まさか自分が後輩さんをもつ立場になるとは思いませんでした。

新人教育…どうすればいいんだろう。
ここでは当時の私がおこなった”育成方法”と、その記録をお伝えしていきます。教育に悩むSTの参考になるかも知れません。
※STの技術的な側面ではなく、あくまで対人指導上のスキルに注目した内容であります。
新人教育に悩む言語聴覚士に知ってほしいこと【コーチングのすゝめ】
さきに私自身の話しをさせてください。
これまで教育に触れる機会がなかった私は指導が不安でした。
- ちゃんと教えられるかな…
- ことば使いは大丈夫かな…
- ミスをフォローできるかな…
いまおもえば自分中心の不安ばかり。
一番不安を感じているのは後輩さんだというのに。
にも関わらず口ばかりは達者で、指導を通じて先輩らしさをアピールしようとしていました。

自分に自信がなかったのです。
ですが、虚勢を張る先輩なんてのはただの強がりです。
わたしは後輩さんを受け入れようという姿勢にとぼしく、ただ自分のスキルをひけらかす”誘導的”な指導ばかりでした。
そんな私に”指導の本質”を気づかせてくれた本がありました。
指導者に必要な”コーチング”とは?
その本とはこちらです。
指導法を学ぶために数々の本を読みましたが、最高の一冊はこちらです。
この本では指導を”コーチング”と呼び、聴く技術だと説明します。
コーチングとは、会話によって相手の優れた能力を引き出しながら、前進をサポートし、自発的に行動することを促す”コミュニケーションスキル”です。
※コーチングは「相手に考えさせる」指導法といわれ、一方で「ティーチング」とは、相手に答えを教える指導法といわれます。
いままで伝えることが中心であった私には、相手の話しを”聴く”という姿勢があまりなかった。
そもそも”聴くって?”という状態だったのです。
コーチングとは相手を”受け入れる”技術である
”聴く”それは、相手を受け入れるということ。
コミュニケーションは話すことよりも、むしろ”聴くこと(受け入れること)”のほうが重要である場合が多いのです。
聴いてくれる相手がいる環境は、”安心できる場”といえ、その安心感が、その人により深い洞察力(答え)を与えます。
このコーチング法。
STなんかは慣れ親しいのではないでしょうか?

失語の訓練にも通じる気がします。
逆に指示ばかりで話を聴こうともしない人に安心感を持てませんよね…。
話し手の意見を否定せず、”聴き入れてくれる人”と、ひとは一緒にいたいと思うのです。
コミュニケーションを促進させる聴き方
ここから実践編です。
”聴く”といわれても実際にどうするべきなのか?
コーチングの本によると3つのステップで考えています。
- 聴いて
- 受け入れて
- 質問する
「聴く・受け入れる」で大切なのは、相手が話しているときに「あーそういうことね」と自己解釈しないこと。
一番やってはいけないのは、相手が話している最中に「こう言い返してやろう」と考えてしまうことです。

すでに誘導しようとしており、話を聴いていません。
できるだけ、フラットな白紙脳で聴くようにします。
…すると相手のもつ”価値観“に気づけるようになってきました。
アドバイスや意見はせずに「質問をする」
ここでの「質問」とは、相手の気づき(成長)を促進する指導法です。
相手の話しを聴いていくと、どこかでキーワードとも取れる”価値観”が話されるときがあります。
この価値観を引き出す意味でも、指導者は、聴き手役に徹する必要があるのです。
すこし私の経験談をお話しします。
「質問」から変化した後輩のおはなし
※内容は一部変更しております。
私の後輩でAさんというSTがいました。
Aさんは新人症例発表会の日程が近いにも関わらず、その準備を一向にしようとしません。
Aさんはよく「勉強が分からない」「わたしにはできない」というネガティブな発言を頻繁にする子でした。
ですが、ことばとは裏腹に、患者さんへの対応は真剣そのものでして、私はそんなAさんの発言に”違和感”を感じていました。
その違和感とはAさんの持つ、高い目標です。
答えはその人のなかにある
私はF.Bの時間をつかい、Aさんとコミュニケーションを図りました。
Aさんはどうやら「できない」のではなく、目標に到達できない自分自身に、諦めのような心情を抱いていたようです。
「できない」自身を晒すかもしれない症例発表会につよい不安を抱き、前進できずにいる…といった状態でした。
*
私はしばらく話を聴いたあと、「その目標を持った理由は?」という質問をしました。
しばらく沈黙が続き、Aさんは自身の”複雑な生い立ち”を話してくれました。
私ははなしを聞いたあと「その高い目標はAさんの”長所”だね」と伝えました。
するとAさんは「え?」という表情のあと、またしばらく沈黙が続き、ちいさく頷いたあと、普段の雑談にもどりました。
その日を境にAさんの進撃がスタート。
結果、堂々たる発表に至れたのです。
*
発表会の帰り道、Aさんが放った一言がわたしの心に残りました。
わたし、前に進めた、進んでます。
*
私のなかではAさんへ際立ったアドバイスなどはしておらず、聴き、質問をしてみた…だけです。
また、この出来事が必ずしもコーチングの成果かどうかはわかりません。
とはいえ、Aさんが前進するキッカケになったのでは?
と、そう考えています。
おわりに
ここまでお疲れさまでした。
聴くに慣れたSTといえど、コーチングを知る機会はあまりないのでは?と思います。
これを機に学んでみてはいかがでしょうか?
では~