【言語聴覚士】バイザーが意識しておきたい実習生への「接し方」

STコラム

こんにちは。
万年平社員、実習指導者のかづおです。

とうとう「スーパーバイザー」になってしまったSTのアナタ様。

かづお
かづお

緊張しますよね!

誠実なSTほど、緊張したりします。
きっと「実習生にちゃんと教えられるかな…」なんて。まぁ肩の力を抜いてください、大丈夫ですよ( ̄ー ̄)vv

というのも、実習生は『自ら成長する』存在で、その成長をフォローするのが指導者という考えがありまして。

そんなわけでここでは「バイザーが意識しておくと良い実習生との接し方」のお話しになります。

かづお
かづお

第二弾はこちら。

【言語聴覚士】バイザーが意識しておきたい実習生への「指導法」
実習生の「思考タイプ」を見極め、それぞれの能力を生かした指導をご紹介します。バイザー必見の内容です。

»【言語聴覚士】バイザーが意識しておきたい実習生への「指導法」

*ここでの話しはフレームワークに過ぎません。参考程度にお考え下さい。

【言語聴覚士】バイザーが意識しておきたい実習生への「接し方」

先ずはじめに、実習生が私たちが望む状態になることはまずあり得ません。

わずか1~2数か月の期間では、ものごとは断片的にしか学べませんし、主だったノウハウは現場に出てからですもの。

「評価はこうして!」とか「患者さんとは…!」といった指導も大切ですが、それよりも『実習生の動機や姿勢を考慮して接したほうが、なにかと能率的です。

ですので、アナタがやれることは『意外にも少ない』ということを先にお伝えしておきます。

実習生との関係性にむけて

さて、実習を通して学習が進んだ!と感じられた生徒のほとんどはこう言います。

かづお
かづお

バイザーとの関係が良かった。

このこと、ご自身もおおいに経験されているハズです。

実習について研究された文献でも、バイザーとの関係性がどうであったかが、実習の出来栄え(成功体験)を決定するといわれます。

» 言語聴覚士実習生の臨床実習への満足度に影響する要因

さきほど私は「バイザーは意外とやることが少ない」と言いましたが、ではどうやって実習生との関係を築いていくのか?

わたし個人は実習生の『やる気傾向』から、接し方を考えるようにしています。

実習生の「やる気傾向」って把握していますか?

外交的、内向的、具体的、抽象的、回避フォーカス、獲得フォーカス…。

巷にはメチャクチャたくさんの分類概念があります。なんとなく知っておいた方が得します。

とはいえ覚えるのはメンドイので、私個人はざっくりこの4つで考えます。

  • STになりたくて来た人
  • 進路の関係でST養成校に入学した人
  • 医療職という安定性から資格取得に来た人
  • イヤイヤながら実習に来た人

STになりたくて来たひとは言うまでもないですが、そうでない生徒との間では「欲求水準」に差があります。

私はこれを単に「やる気の差」という風に考えるようにはしません。

かづお
かづお

それぞれの「人生背景」がありますし。

ですので『この実習生はどんな事情でここにいるんだろう?』と考えるようにしています。

でないと、適切ではない指導によって実習生のモチベーションだけでなく、アナタの時間も削られてしまいかねません。

実習生の動機にもよりますが、基本的に『(実習生は)自ら成長する存在だということを忘れないようにします。

成長する人は自ら進む、逆にそうじゃない人は?

ひとの「成長意欲」には2通りあるといいます。
これ要チェックですよ。

  • ①:獲得フォーカス
  • ②:回避フォーカス

 獲得フォーカス
高いレベルの成果を出したいと考えている。

 回避フォーカス
安定感や信頼性を重んじる。

かづお
かづお

実例を2つあげてみます。

①:40代の女性のケースです。

その方は自身の年齢と将来性を鑑みて、STに就いた後にビルドアップする気はないといった様子でした。

つまり「回避フォーカス」の傾向です。

②:かの名門、北里出身の実習生ケース。

レポートよし、発表よし、むしろ私が教えてもらいたい…。嫉妬したとは言わない。

こういう人は「獲得フォーカス」だと考えます。

獲得とも回避ともいえない「問題生徒」であれば、前もって教員から「こうしてほしい」といったお達しがくるはずです。

ひとのやる気傾向を単に「フォーカス」だけで判断はできませんが、対応法として知っておくと育成方針の補助になりえます。

こういった実習生の傾向をつかみ、各々に適した『成長の場』を提供し続けるのが、バイザー指導の本質だと私は考えています。

さて、つぎから実践編です。

「成長の場」を提供する接し方とは?【具体的に解説】

ここからはバイザーとしての実践編です。

わたしはバイザー指導の本質を『成長の場の提供』だとお伝えしました。

具体的にどのようなことなのか?
「キーワード」だけ先にお伝えすると、こうです。

  • 傾聴
  • アウトプット
  • 心理的な安全性
  • 否定しない

実習生の成長の場とは、バイザーの「精神的な態度」からスタートします。

これは実習生のみならず、後輩への指導にも通用する話ですので、よーく読んでみてください。

「アウトプット」の重要度を考える

成長の場とは『実習生が得た刺激を、自ら引き出せる環境』だと、私は考えています。

実習生はいま現場にいます。

目を開けば患者に医療スタッフ、耳を澄ませばステーションに響くアラート音。鼻を利かせば、バルーンの臭い。

なにもかもが刺激的です。
それだけで十分なほどの経験をインプットしています。

そのインプットをいかに実習生(その人)らしくアウトプットさせてあげられるか?だと考えています。

では実習生が行う「アウトプット」ですが、3種類ほどでしょうか。

  • 口頭での会話(患者&スタッフ含め)
  • デイリー&学校用レポート
  • 症例発表

*このほかにも有るとかおもいます。

レポートと発表は慣れが必要ですので、ここでは重視しません。添削をくわえていけば良しとします。

肝心なのは『口頭でのやり取り(コミュニケーション)』だと考えています。

アウトプットに「聴く姿勢」をもつ

とかく口頭伝達力はST業務のキモですし、重視してさしつかえはありません。

実習生には、口下手な人もいます。
ですが、それを指摘する必要はありません。

そういうケースではこちらが、”表情をゆたか”に聴く姿勢を保つこと。そしてクローズドな質問をしてみてください。

「○○さんの評価よかったよ」
「あのときどういった工夫をしたの?」

このとき「評価まちがっているよ」のような否定から入らないように。

やりがちなのが「今日だった?」です。
さすがにこれでは質問の範囲が広すぎて、返答につまります。

バイザーの意図を汲める有能実習生であれば、この声掛けでも大丈夫かも知れませんが。

覚えておいていただきたいのが「聴く」という姿勢は、相手の成長力を促すもっともシンプルで効率的な方法だということです。

「このひとは聴いてくれる人だ」と感じられただけでも、実習生の緊張はほぐれ、心理的な安全性が確保されます。

この『心理的な安全性』が確保されると、実習生は自ら考えるパフォーマンス力がUPします。

心理的な安全性は「成功体験」につながる

「このバイザー先生は目くじらを立てず、はなしを聞いてくれる人だな…」

実習生としては聴き入れられたという気持がこころの「安全性」になり、上手くいかなかったとしても、大丈夫かも!という精神になります。

かづお
かづお

チャレンジ精神というやつです。

その精神が『成功体験のきっけか』になる。これホント大切。

成功体験は将来性を育みますよね。
そのため傾聴は「未来志向的」な指導法だともいわれます。

逆に事あるごとにアドバイス(指摘)したがるバイザーは、実習生にとって一方的な関係になりがちです。

だからといって「資料読んどいて」的な丸投げはアウトです。

実習生にとっての成長とは「自ら考えられる場」であり、その最たる方法がバイザーの『傾聴する姿勢』だということです。

これはいい切れます。

傾聴姿勢は「レポート」にも応用できる

文字表現がニガテな実習生もいます。かくいう私もガチンコで苦手でした。マジで。そして今でも…。

私が実習生のころ、臨床実習のバイザー先生は、私のいたらないレポートを「書けているね」と、丁寧なことばつかいで、提出する度に褒めてくれました。

文字数がすくなく明らかにずさんな評価レポートであってもです。

私はそれを伝えられる度に『書けるようになろう』と、どんなに眠くても自分の努力と向き合うようになりました。

否定されず、聴き入れてくれるその姿勢に、よろこびを感じました。

あとでバイザー先生が教えてくれたのですが、まったく書けない実習生にはほとんどを望まない(期待しない)といわれました。

そういった人には、その人なりの将来性や、考えがあるから、私はただその人に合わせているのだと。

逆に言うと、多くを与えない指導…とも言い換えられますか。

先述した「やる気傾向」ではないですが、こういった指導法を身に付けている指導者は、実習生にとってもバイザーにとっても負担が少なそうです。

「本当に書けない!」とか「提出できない…」というレベルの実習生であれば、口頭でのやりとりをレポートに書いてもうなんてことも想定します。

そのためも、傾聴して「ことば」として引き出すことが大切です。

そのほうが実習生としても書きやすいでしょうし、こちらとしてもレポートさえあればF.Bで添削できます。

レポートは『観察・評価・治療、自身の態度』などの添削、口頭での会話は『傾聴』を主軸にという使い分けなんかもできそうですね。

傾聴姿勢だと実習生の「意見」を受け止められる

見当違いな評価や、明らかな誤りはかならず出てきます。

仮にHDSRを取ろうとした理由は?と質問してみたらこういった返事が来たとします。

かづお

何となくそう思った。

かづお
かづお

エレガント!笑

(やる気あんのかぁ…!?)
苦笑いレベルの返答ですが、一旦は受け止めてください。

「そういう風に考えてみたんだね」
「その考えに至った理由を訊いてみてもいいかな?」

などと受けとめてから、相手の考えを再度「質問~リスニング」します。

指導者にとってはトンデモ意見でも、実習生にとっては振り絞って出した見解(価値観)かも知れません。

ちなみに私の先輩は学生時代に、嚥下の根拠をバイザーに尋ねられた際に『わたしの考えこそが根拠です!』と言い張りました(笑)

そんな先輩はいまでは学校でST先生やっています(笑)

ようするに、聞き手の尺度で「即時的」に判断しないことです。

実習生のアウトプットを遮断すると「否定」が生まれる

明らかな誤りだからと反論的に話しを遮ってしまうと、ある種の『否定』が生じます。それが親切心であったとしてもです。

実習生は否定を感じると、次から相手の顔色を窺うようになり、バイザーにとって都合のよい意見ばかりを伝達するようになります。

これではリハにおける発想や発見、それに自ら成長するキッカケを封殺してしまいかねません。

かづお
かづお

なんでも言える状態こそ「成長」です。

勉強不足だとか、そんなこともできないの?ではなく、ガチガチな緊張下で実習生は精一杯やっているんだという観点で接するようにします。

自分たちも初心のころはそうでしたもんね。

その後、実習生にはレポートを提出してもらい、そこで笑いながら『鋭く』訂正を施してみてください。

たいへんではありますけどね。

【言語聴覚士】バイザーが意識しておきたい実習生への「指導法」
実習生の「思考タイプ」を見極め、それぞれの能力を生かした指導をご紹介します。バイザー必見の内容です。

»【言語聴覚士】バイザーが意識しておきたい実習生への「指導法」

本記事を書くうえで参考にした書籍

ここまでおつかれさまでした。

何だかんだであっという間に過ぎる実習期間なので、振りかえると「あーしておけば良かたっかな~」とか出てきます。

すると、参考書なんかが気になったりします(笑)

それではこの記事を書くうえで参考にさせていただいた本を紹介して終わりますー。

おたがい少しずつレベルアップしていきましょ。

それでは~