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【文献】外国人の失語症評価と訓練を調べてみた

文献

「外国語話者の失語症への対応(訓練・評価)」について書かれた文献を調べてまとめてみました。

要点を得られるように記してあります。お役立てください。

かづお
かづお

ことばの壁があっても大丈夫!

本記事は一言語聴覚士の見解であり、病態把握の完全な手引きではありません。ご意見・訂正などは「お問い合わせ」よりお寄せください。
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【文献】外国人の失語症評価と訓練を調べてみた

外国語話者へのリハ介入は、かなり不安だと思います。

かづお
かづお

私も、対応に難渋しました…。

先ずは、文献で語られているポイントを押さえておけば、具体的な対策も見えてきます。

» 外国語話者の失語症の評価および訓練実施の判断について|言語聴覚士研究

まずは「ポイント」を押さえよう!

外国語話者を担当するにあたり、以下の点が、失語評価・訓練の適応を左右する要因になると考えられています。

重症度 担当STの対象言語への「馴染み」 評価・訓練
重度~中等度 あり 日本語話者とおなじ様に実施できる
重度~中等度 なし 通訳やアプリで補助を得る
軽度 あり 外国語検査貸し出しサービスの利用やシンプルな訓練
軽度 なし 他院への紹介や対象国からの遠隔治療
【文献用語】
馴染みとは「その言語での簡単な会話ができる、文化への馴染みがあり、情報収集が容易」なことを指す。

上記以外にも、押さえておきたいポイントがあります。

  • 外国語版の検査バッテリーの入手や、SLTAの翻訳
  • ST協会国際部の「外国語言語検査貸し出しサービス」の利用
  • 外国人話者の文化を理解すること(ジェスチャーの違いなど)
  • AIやアプリを活用した評価・訓練プログラムの作成

とくに、AIやアプリなどの活用は、「現代を生きるST」にとって重要なスキルになっていくと思います。

外国人の失語症「情報」を知る

文献では9名の外国人患者さんを報告しています。

各症例の「情報」

9症例の概要をまとめてリスト化しました。

国籍 イギリス、ペルー、中国、タンザニア
イラン、モンゴル、中国、ナイジェリア、アメリカ
年齢、性別 年齢平均42歳、男性8人、女性1人
診断名 おもに脳血管障害、未破裂動脈瘤
言語病理学的診断 軽度3名、中等度から重度6名
STリハ内容 評価は3名のみ
のこり6名は訓練実施(2か月~最長2年)
生活歴 日本出身者はおらず、移住者や旅行中の発症など
バイリンガル力 日本語堪能な患者は2名のみ
ほかは母国語と英語などバイリンガルを含む
ST側の日本語以外の他言語への馴染み ほぼ「英語」のみで、
他言語への理解力は乏しい
訓練中の使用言語 日本語の使用は2名のみ
ほかは通訳者、通訳アプリにて「母国語」で訓練した
通訳アプリの使用 日本語能力が堪能ではない3名に使用

9例中、日本語能力が「困難」な症例は7例いました。

いまでは通訳アプリやAIもあるため、言語変換そのものは、以前ほど難題ではないとされています。

それよりも考えたいのが、文化への理解です。

この点については、訓練編で後述します。

外国人への失語症「評価」を学ぶ

各症例の「評価」

9症例に、どのような評価を実施したのかを表でまとめました。

症例の国籍、出身 第一言語、第二言語 評価手続き 評価上の原語病理学診断
1:イギリス 英語、なし 英語を用いてMMSE ほぼなし(ST終了)
2:日本、ペルー スペイン語、日本語 SLTA、SLTA-STの呼称で、
ペルーにも馴染みある83語を実施
両言語とも軽度(ST終了)
3:中国 中国語、なし 通訳者を通じてSLTAを実施 重度
4:タンザニア スペイン語、英語 両言語とも、単語レベルで評価実施 重度
5:イラン ペルシャ語、なし ペルシャ版WABで通訳は息子 軽度、家族指導のみ(ST終了)
6:モンゴル モンゴル語、なし 妻の翻訳でモンゴル語と同じ、
キリル体系の「Bilingual Apahasia」を実施
中等度
7:中国 中国語、なし Google翻訳で中国語SLTAを作成実施 中等度
8:ナイジェリア ナイジェリア語、英語 「貸し出しサービス」でWABの実施 中等度から軽度
9:アメリア 英語、日本語 WABの英語、日本語版をそれぞれ実施 両言語ともに軽度だが、日本語で低下

9症例とも、第一言語で評価を実施しています。

多言語話者(バイリンガル)の訓練では、「母国語かどうか」だけでなく、発症前にその言語をどの程度使用していたかも評価のポイントになります。

では、日本語以外の検査バッテリーは、どうやって手に入れるのでしょうか。

「外国語言語貸し出しサービス」の詳細

ST協会国際部の「外国語言語検査貸し出しサービス」利用すると、英語圏で作成された評価バッテリーが手に入ります。

検査用具名 評価内容
WAB 失語評価
CADL-2 日常会話能力
ITPA-3 言語処理・発達
PPVT-Ⅲ 語彙の理解
EVT 表出語彙
ゴールドマン・フリストー
(Goldman-Fristoe Test of Articulation )
構音
Susan Brubaker ワークブック トレーニング資料

筆者はこれらの貸し出しサービスを受けたことがありませんので詳しくはありません。

また、貸し出しを受けられるのは「協会員のみ」とのことです。

Bilingual Apahasia Test(BAT)の入手方法

先ほどの「貸し出しサービス」は英語圏のみなので、英語以外の言語バッテリーを探す際はこちらを利用してください。

Bilingual Aphasia Test (BAT)
| How to put together a stimulus book | Individual language tests | Language-pair specific tests | How to construct a bi...

「日本語-英語、英語-アラビア語」のようなバイリンガルに対応していますが、存在しない組み合わせもあります(日本語-中国語とか)。

外国語話者向けの評価を「作る」方法

【結論】
「AI」を使用します。

SLTA下位項目の一部をchatGPTなどに取り込み(SLTAを写真で取るなど)、AIに言語変換してもらう方法です。

ただし、事前に責任者に確認をしてから行ってください。

AIがよくわからない方はこちらの本を参考にしてください。

外国人への失語症「訓練」を学ぶ

各症例にどんな訓練をおこなったのでしょうか。

訓練内容をまとめてお伝えします。

外国語話者への失語訓練(重症例)

  • STは中国語、スワヒリ語などの訓練語と簡単な教示法を学んだ
  • 単語レベルの系統的・総合的訓練を行った
  • 教材を自主的に作成して訓練を実施した
  • 訓練帰還は2か月~4か月だった

重症のケースでは単語レベルでの教示でした。担当者としては、訓練教材作成への負担は少ないといえます。

外国語話者への失語訓練(中等例)

中等度あたりから、STへの負担が大きくなります。

外国語に馴染みのないケースでは、アプリやAIの駆使、および通話者の存在が必要になります。

  • iPadを用いて言語教育アプリ(Bitsboard)を使用した
  • 中国の症例には症例の友人に翻訳協力をしてもらった
  • 訓練は週5、1時間で2~5か月間だった
「Bitsboard」は登録したカード画像と文字・音声の組み合わせでさまざまな刺激を操作できるアプリ。
  • 軽度~中等度の患者には「RISP法:即時呼称訓練」を実施
  • RISPに用いた単語は英検4級レベル
  • RISPに用いた絵カードはすべてAI(Bing Image)で作成した
  • 訓練は週1で8か月、現在は月1で継続中

「RISP」の詳しい情報はこちら。

【文献】失語症訓練「RISP」について調べてみた
流暢で自然な発話生産に注目した「RISP」について、文献で調べてまとめてみました。

訓練で「注意」すべき事

日本人にとっては馴染みのある絵であっても、「文化の違い」で理解し難いケースもあります。

対象言語の文化圏でのことばの頻度・親密度・カテゴライズの典型は日本とは異なる場合があります。

かづお
かづお

ジェスチャーにも注意です。

以下は筆者しらべです。

たとえば、頭の上に「〇」を手で作る人の絵カードを、米国では「ヨガ、ダンス」と捉える傾向あるようです。

日本では指さしの上下配置が「ここ/そこ」といった文脈的な場所指示として解釈されやすいです。

一方、米国では「上/下」という方向そのものとして理解される傾向があるようです。

バイリンガル失語症者の回復傾向

覚えておくと参考になる「失語症の回復傾向」があります。

回復しやすい言語とは

その言語の取得時期(7歳前)や、練度に影響します。

STはまず、成育歴の母国語と使用言語の違いを把握しておく必要があります。

バイリンガル失語症者の回復傾向とは

法則性 内容
Ribotの法則 幼児期に最初に獲得した言語(第一言語)が最も早く回復しやすい
Pitresの法則 発症時点で最も頻繁に使用していた言語が最も回復しやすい
Minkowskiの法則 情緒的・感情的価値が高い言語ほど回復しやすい(Ribot、Pitresで説明付かない症例を補うもの)

このほかにも、「文法的に似ている言語(日本語、韓国語)」ほど並行回復しやすいとされます。

第一言語の回復は、第二言語の回復に影響を与える(転移)報告も出ています。

» 多言語話者の失語症の障害と回復|高次脳機能研究

失語の臨床力を高める「文献」のご紹介

外国語話者への失語症訓練も、日本語話者への訓練と同様に、「系統的な訓練」が効果的とされています。

あらためて、失語症訓練のポイントを押さえてみませんか?

【文献】音韻・意味セラピーについて調べてみた
失語症訓練でメジャーな「音韻・意味セラピー」について、文献で調べてまとめてみました。

ではー。