嚥下障害の『原因と理由』を探る「VF」の解析方法をくわしく述べた文献をしらべてまとめてみました。
要点を得られるように記してあります。お役立てください。

VFの理解を深めたいSTはどうぞ!

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【嚥下臨床】VFの画像解析について調べてみた【文献情報】
参考にした文献では、VFの読影には2つポイントがあるとされます。
- 食塊の動きに注目した「摂食・嚥下障害」の症状
- 「解剖学的・形態学的」な問題
まずはこの両点からの見極めと、それぞれの患者に応じた対策が肝要であると記されています。

そしてもう一つ!
ただしい嚥下解析のためには『正常嚥下を学んでおく』必要があります。
正常嚥下の理解【2つのメカニズム】
正常嚥下のメカニズムを2つを解説されていました。
- 食道入口部開大のメカニズム
- 喉頭閉鎖のメカニズム
1.食道入口部開大のメカニズムを知る
食道入口部の開大は『舌骨が前上方に挙上する』ことは知れたところです。
その動きの形成には、以下のムーブメントがおこなわれます。
- ①:輪状咽頭筋の弛緩
- ②:弛緩した輪状咽頭筋を引き伸ばす喉頭の前上方への移動
- ③:咽頭の嚥下圧
③は舌根部と咽頭壁の閉鎖で生じる「圧」です。
そこで、食塊の通過障害は食道入口部だけの問題でなく『圧の生成不足』かも?という観点も欠かせません。
また、この部位の閉鎖不全は「鼻腔への逆流」にもつながります。
2.喉頭閉鎖のメカニズムを知る
嚥下中の喉頭閉鎖は『喉頭蓋が反転して、気道を防御する』とされ、このメカニズムには3つの閉鎖が絡んでいると分析されます。
- 喉頭蓋の閉鎖
- 喉頭前庭の閉鎖
- 声門の閉鎖
正常嚥下のメカニズムでは『圧と閉鎖』がキーワードであると理解できます。
喉頭閉鎖のタイミングには順序がある!?
InamotoらのCT分析により『喉頭閉鎖には順序』があることが判明しました。
- ①:舌骨が挙上開始
- ②:喉頭蓋の下方傾斜開始
- ③:食道入口部の開大開始
- ④:喉頭前庭の閉鎖
- ⑤:舌骨の最大挙上
- ⑥:喉頭蓋の最大反転(閉鎖)
この順序をわずか「0.5秒」で達成するわけですね。

ここで理解すべきは⑥までの流れ!
喉頭蓋が最大反転(閉鎖)するためには、①~⑤の手順がただしく遂行される必要がある。したがって『喉頭蓋の閉鎖だけを過信してはいけない』のです。
このことを理解したうえで、観察していく必要があります。
VFの症例を通じて「嚥下障害」を分析する
文献では、代表的な3つの異常所見(嚥下反射惹起遅延、誤嚥、残留)から「嚥下障害を分析」しています。
その「分析」をざっくりと要約して記していきます。
VFの分析から「嚥下の評価」をしてみる
文献では「嚥下分析の練習」ということで、症例情報の具体的記載はカットされていました。
そのため以下の項は、嚥下分析や報告書記載のための『ポイント』としてお役立てください。
嚥下反射惹起遅延(トロミなし液体2mlの嚥下)
VFでは、咽頭期の遅延はあるものの、ある程度の機能保全が示唆された患者がいた。
(食塊が喉頭蓋谷に到達した瞬間に、反射性の反応あり)
誤嚥
喉頭の下降完了時に、喉頭内面に食塊が侵入したが、その0.1秒後に喉頭蓋の再閉鎖により、誤嚥は免れた。
残留(ペースト小さじ1/2杯の命令嚥下)
液体嚥下に比べると残留が多く、そのほとんどは「喉頭蓋谷」であったが、その1.84秒後に「梨状窩」に落ちる。
VFでは『舌根部と咽頭壁の境界線がわかってしまう』ほど、両部の接触ができていなかった。

梨状窩だけの残留ではない点に注目!
VFの解析から「対策法」を考えてみる
嚥下反射惹起遅延
分析では、トロミなしの水分摂取は禁止には至らないと判断。
しかし、口腔からの送り込み運動が確実な嚥下反射につながらないと、若干のリスクが想定されるため「意識嚥下」などにより、中枢からの入力を強化する必要がある。
喉頭侵入と誤嚥
僅かなトロミ付けの対応も考えられたが、現病歴が非進行性で肺炎の既往はなく、認知・身体・呼吸機能は良好。
本人の希望があれば、自発的咳嗽を促しての飲水もあると判断。
残留
本症例の食道は前後に大きく開くため、残留が輪状咽頭筋の問題ではなく、「口頭挙上と咽頭の嚥下圧」による残留と考えた。
対応策として、口頭挙上の低下には「シャキアやメンデルソン」、喉頭蓋谷の残留には、「舌の運動訓練、努力嚥下、前保持法」など。
食塊の粘性がUPすると、残留が増えるため、食品や姿勢の調整、交互嚥下といった「摂取方法の工夫」も検討。
【メリット】嚥下評価の背景と対応策を「表」で知れる
個人的にこの文献最大のメリットは、異常所見とその対策法を『表』でまとめている点です。
例えば、嚥下中に誤嚥があるとしたら、「〇〇に問題」があるとされ、その「対策法には〇〇」といった具合にです。

参考になりますよ。
また、こちらの記事も嚥下臨床の参考になるかも知れません。

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では!