【PR】当ブログでは広告リンクが含まれる場合がございます。

【失語訓練】音韻&意味セラピーについて調べてみた【文献情報】

STコラム

失語症訓練でメジャーな『音韻・意味セラピー』の文献を調べてまとめてみました。

要点を得られるように記してあります。お役立てください。

かづお
かづお

発話訓練に悩むSTには必見です!

本記事はいち言語聴覚士の見解であり、病態把握などの完璧な手引きではございません。ご意見、訂正依頼などございましたら「お問い合わせ」にてお聞かせください。
【必読】言語聴覚士おススメの文献をまとめて掲載【随時更新】
言語聴覚士が「ぜひ読んでおきたい」文献をまとめたページです。日々の研鑽に役立ちますよ。

»【必読】言語聴覚士おススメの文献をまとめて掲載【随時更新】

スポンサーリンク

【失語訓練】音韻&意味セラピーについて調べてみた【文献情報】

「音韻・意味セラピー」とは、失語症状の機能に焦点をあてた訓練法です。

例えば、意味機能に障害があればそこに『ターゲット』を絞り、リハビリしていく…といった技法です。

ターゲットを絞る理由は、失語症の回復プロセスが音韻・意味機能の回復(Lambonら)』とされており、その機能改善にむけた合理的な治療のためだと考えられます。

参考文献:発話生産に対するアプローチ|高次脳機能研究

症例1.音韻セラピーの実際【文献の実例より】

セラピーの実例を文献より、要約してお伝えします。

評価:音韻セラピー

『音韻障害』を認めた、50代の右利き男性(高校中退)。

  • 左頭頂葉皮質下性出血
  • リハは発症から1.5ヶ月後より
  • 右片麻痺
  • 流暢型失語、失行、右半側空間無視

文レベルの自発話に著しい呼称障害(2/20)。復唱は単語から不確実で、音読は仮名単語の一部を除いてほとんど正答せず。

(掘り下げ)検査上、重度の音韻障害と良好な意味機能が示唆されました。

訓練①:音韻セラピー

訓練内容は、絵と文字の同時提示して、確実に復唱可能なモーラ数を「くり返し復唱」するところからスタート。

4モーラ語になると困難を呈したため、鉛筆なら『えん』と『ぴつ』のように、生産できるモーラ数に分けて、別々に復唱させた。

確実に復唱可能となったところで「えん」と「ぴつ」を結合させ「えんぴつ」と生産させる。

かづお
かづお

これを「blending課題」というようです。

うーん、勉強になります。

訓練②:音韻セラピー

復唱が確実となった時点で、復唱の前刺激後に「音読」→「呼称」へと促す。

経過とともに仮名一文字の音読が可能となったため、途中から復唱ではなく音読に変更。

音読は「仮名→漢字→呼称」へと切り替えた。

音韻セラピーの「結果」

訓練開始から3.5か月後。

  • 呼称:2/20→16/20
  • 復唱:2文節レベルは不確実ながら可能
  • 音読:短文レベル

自発話については「そのまんま東」などの多音節かつ実質語の生産が豊富に。

音韻性錯語は残存するも、ターゲットを同定し得る語へと変化したようです。

症例2.意味セラピーの実際【文献の実例より】

つぎは「意味セラピー」の実例をお伝えします。

評価:意味セラピー

『意味障害』を認めた、50代の右利き男性(大卒)。

  • 左中大脳動脈領域に広範な脳梗塞
  • リハは発症から2ヶ月後より
  • ごく軽度右片麻痺
  • 中程度流暢型失語、構成障害、右半側空間無視

呼称の誤反応(16/20)は大半が意味性錯語で、語頭音ヒントでの促通は不確実。

復唱&音読はいずれも短文レベルで、概ね7~8割の正答だが、必ずしも理解を伴わなかった。

(掘り下げ)検査上、音韻は保持されながら、意味機能の障害が明らかになりました。

訓練①:意味セラピー

訓練では、ターゲットとなる語のマッチング課題(絵と単語など)をさせ、更に「カテゴリーごとに単語を分類」する課題をおこなった。

例:野菜・台所・調味料・ドリンクなど

症例の回復過程に合わせて、異なるカテゴリーから『意味的に類似したカテゴリ』へと課題難度をコントロールした。

かづお
かづお

異カテ→同カテ。

訓練②:意味セラピー

文献では『odd課題』を用いていました。

  • odd picture out
    絵の中にある「仲間外れ」を削除する
  • odd word out
    合わない「単語(文字)」を削除する

たとえば「ズボン・靴下・みかん」のような刺激提示です。

ほかには以下のような訓練も行っていました。

  • 反対語課題(例:老人ー若者)
  • Yes/No判断課題(例:苺は田んぼで採れる?)

意味セラピーの「結果」

退院時には会話での錯語や各課題での誤りは軽減したとのこと。

ただし、この患者さんとのリハ期間は短く、そのため経時的な変化は確認できなかったようです。

【SFA】喚語したい単語を「意味属性」ごとに考える訓練

別の文献ですが「SFA」と呼ばれる単語の周辺情報を想起して喚語をうながす意味セラピーもあります。

たとえば「みかん」を喚語したい場合、みかんについての意味属性をSTが用意します。

「味は?、色は?、形は?、名産地は?、時期は?」など…。

意味属性は口頭で回答してもらい、その後、用紙に記述してもらいます。

かづお
かづお

意味理解力の向上させる技法ですね。

参考文献:日本語慢性期流暢性失語症 2 例への Semantic Feature Analysis (SFA) による呼称訓練の効果

失語症臨床を「動画」で学べる参考書

机上だけでは絶対身に付かない「失語臨床」を『動画で学べる参考書をご紹介します。

【失語症】臨床に役立つ参考書を一冊ご紹介【書籍内に動画解説あり】
失語症アプローチを「臨床的」に解説されている本をご紹介していきます。訓練法に悩むSTは必見です。

» 失語症臨床にとても役立つ1冊の参考書をご紹介【訓練を動画で解説】

ではー。