はじめまして。
言語聴覚士(ST)のかづおと申します。
言語聴覚士について調べると、ネット上には明るく前向きな内容のサイトが多く見つかります。
一方で、『言語聴覚士 やめたほうがいい』といった否定的な意見も散見されます。

なぜ、やめたほうがいいのか?
その理由を現役の言語聴覚士が解説します。
なぜ、言語聴覚士はやめたほうがいいのか?【就職前に現状を知ろう】
先にお伝えすると、言語聴覚士は本当に素晴らしい仕事です。
そのうえで、現実的な課題や大変な部分にも目を向けて、より深く知っていただきたいと思っています。
言語聴覚士を「やめたほうがいい」理由
- 年収は低い傾向にある
- 有資格者が多いと「就職難」になるという声
- リハビリの質の低下が懸念
ひとつずつ解説していきます。
①:年収は低い傾向にある
「リハビリ職=高待遇」という考えで、言語聴覚士を選ぼうとされているかたへ。

情報を見直してください。
リハビリ職の年収は、日本人の平均年収と比べて同じぐらいか、それよりも低い現状です。
- 日本人の平均年収:373万
(年収分布:296–747万円) - リハビリ職の平均年収:361万円
県や職場によって変わりますが、平均はこんなもんでしょう。STは医療職にも関わらず、やや低い収入といえます。
――なぜ、でしょうか。
診療報酬は「国」が決めている
リハビリの診療報酬は国が決めており、私たちが自由に変えることはできません。
保険内では1人あたり最大3時間までなので、それ以上行っても収益にはなりません。
つまり「稼げる額に限界がある」ため、給料も一定の水準にとどまります。 将来の収入を重視するなら、職業選びは慎重に考えることが大切です。
» 20代の理学療法士の給料はいくら?【給料面が不安なPT・OTが20代の内にやっておくべきこと】
②:有資格者が多いと「就職難になる」という声
2023年度の有資格者数をみてください。
- 理学療法士:約21万人
- 作業療法士:約10万人
- 言語聴覚士:約4万人
厚生労働省の推計では、2040年頃にはPTの供給数は需要数の約1.4倍になるとのこと。
全国平均で見れば「飽和状態(既に10万人あたり175人程度)」だとする声があります。
一方で、STはPTに比べて有資格者数が少ないのが現状です。STもこのまま飽和状態になり、「就職難?」といわれるのでしょうか。
言語聴覚士は「就職難」なのか?
まず「飽和状態」についてですが、地域差や分野ごとの需給バランス、高齢化によるニーズの変化もあり、一概にそうとは言えません。
また、「資格保有者=現役」ではないため、数字だけで判断するのは難しいところです。
リアルな話し、私の周りでは現場の人手不足が続いていて、多くの職場が人材確保に苦労しています。

これ、マジです。
STは国家資格なので、参入のハードルは高め。PT・OTに比べて有資格者数が少ないため、まだ希少性はあります。
ただし、資格者が増えてきたことで、今後は『リハビリの質』に注目が集まりそうです。
③:リハビリの質の低下
近年、リハビリの「質」が低下していると国から指摘され、2016年には診療報酬が削減されました。
背景には「資格者の増加」による質のばらつきがありますが、そのせいで人手が減れば現場は成り立ちません。
大切なのは、現場で働く一人ひとりが日々の勉強や経験を通じて「質」を保ち続けること。そして、言語聴覚士として働き続けること自体が、業界全体を支える力になります。
質の高いリハビリは、患者さんの回復を促し、医療費の削減、そしてリハビリ業界の存続につながります。
ここまでの「まとめ」
- 年収は「やや低め」の傾向にある
- 医療業界は「社会保障制度」の影響を受ける
- リハビリには「質の向上」が求められている
少し悩ましい内容ばかりに見えるかもしれません。でも、こうした現実を知ることはとても大切な一歩なんです。

熱意だけでは続かない仕事なんです。
でも同時に、もうひとつ大切な視点があります。それは――
この仕事が自分に合っているかどうか、ということ。
次は、そのことをお話していきます。
言語聴覚士として働くことの意義
言語聴覚士として働くとわかることがあります。
- 言語聴覚士としての「やりがい」
- 将来性のある「キャリア」を積める
このふたつは労働に欠かせない『情熱と価値』を満たしています。
このふたつを「客観的に調査した研究」があるので、まずはその結果をみてください。
データでわかる言語聴覚士の「やりがい」
「やりがい」を医療・介護職に絞り調査したところ、以下のような結果が出ました。
- 1位:助産師
- 2位:保健師
- 3位:言語聴覚士
» 参考先:医療・介護職「しごと満足度ランキング」|全40職種を発表
数ある医療職のなかで、言語聴覚士はなんと3位という結果に。わりと凄くないですか?

わたしも納得です!
分析によると「やりがい」が幸福度に影響を与えているようです。
また、こちらの著書にある外国の研究では、『満足度の高い職業研究』に「理学療法士」が2位にランクインしています。
研究ではこうあります。
『感謝している人の声や表情を受け取れることができる仕事』ほど、満足度(やりがい)が高い傾向にある。
リハビリ職はその最たる職業だといえます。
言語聴覚士とは「将来性」のある仕事
AI技術の進歩により「仕事が減る」という声があります。
自分たちのはたらく職域が消失するなんて想像もできませんが、人の手が不要な労働はなくなるだろう予見されています。
そんななか言語聴覚士は、20年後まで残る仕事として名を馳せています。
言語聴覚士には「高いコミュニケーション能力や柔軟な判断力・理解力」が求められます。
そのためAIでは簡単に代替できず、社会に必要性のある専門職として高い評価を受けています。
言語聴覚士として「あなたに伝えたい」こと
ここからは私の個人の意見になります。
実際に働いている者の心情です。
私自身、数々の転職経験がありますが、そのなかでも言語聴覚士としての経験は『有意義で貴重な体験』ばかりでした。
- ことばの理解が進む「失語症」患者さん
- お口から食べれるようになった患者さんの表情
- 気管切開の方が、カニューレを付けて声が出た瞬間
これらの体験は医療職ならではであり、何事にも代えがたい「感動」そのものです。
その感動により、人間性が深く磨かれていきます。
世の仕事に優劣はありません。ですが「言語聴覚士」だからこそ、得られる経験は唯一無二です。
これは忖度なく、私自身の『本音』です。
働いていて大変なときもありますが、それ以上に喜ばしいお仕事だということを、あなたにお伝えします。
さいごに、言語聴覚士を目指すあなたへ
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
ではさいごに。

言語聴覚士を目指す…あなたへ。
STはすばらしいお仕事です。
ですが、物事にはかならず「向き不向き」があります。
目指そうとする業界の実情を知り、情熱だけではない『冷静な職業選択をしようとする視点』を持ち合わせていただきたいのです。
言語聴覚士として、あなたの将来を応援しております。
ではー。