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【症例報告】カニューレ患者のスピーチ訓練と離脱まで【体験談】

ST

カニューレ患者さんへの「離脱に向けたリハ」の症例報告です。

いま現在、カニューレ患者さんへの対応をしており、離脱への検討をされているST先生らのご参考になれば幸いです。

かづお
かづお

文末に『参考書の紹介』もあります!

本記事はいち言語聴覚士の見解であり、病態把握などの完璧な手引きではございません。ご意見、訂正依頼などございましたら「お問い合わせ」にてお聞かせください。
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【症例報告】カニューレ患者への初回評価と確認

結論として、私の経験したカニューレ患者さんは「初回介入から2か月ほどで離脱」に到達したかたでした。

かづお
かづお

VF・VEの無い病院での対応になります。

参考文献は記事の各所にある「リンク先」でのご紹介になります。

初回印象と評価

  • 心原性失神からの「単管カニューレ」対応
  • 下肢性閉塞性動脈硬化症
  • 意識清明、血圧変動あり、やせ型
  • コミュニケーション能良好(筆談で可)
  • 中間とろみ、ペースト食(3食ベッドサイド)
  • DSS4~5、藤島7&7
  • ADL概ね介助(車いす移乗など)
  • 吸引孔からの痰は中量

筆者の拙い経験ではありますが、評価上、スピーチカニューレへの移行はできそうだなと判断。

”経験上の話し”ですがコミュニケーション能は患者の予後を示す指標だと考えています。

1:リハの前に確認すべきこと

当然ですが、STだけでは対応できません。
自分の働いている病棟の『マンパワーの確認』は必須です。

  • 耳鼻科医師がいるか
  • リハ医がいるか
  • 病棟の理解力・協力性はどうか
  • 高位気管切開」かどうか

これらの確認は患者への対応に関わってきます。例えば、良好と思われたカニューレ患者でも、場合によっては次第では窒息するケースがあります。

スピーチカニューレでの下気道閉塞経験(痰詰まり) | 横浜嚥下研究会
先日、スピーチカニューレで痰詰まりを起こして急変しかけた症例を経験しました。管理も決して悪くなかったにも関わらずです。臨床ってこういうことが起きるものですね。 症例は70代女性、脳血管障害と肺炎合併、そのまま呼吸不全とな…

» スピーチカニューレでの下気道閉塞経験|横浜嚥下

リンク先の話しでは『肉芽形成による下気道閉塞』だったようですが、耳鼻科医による素早い対応が行われています。

ほかにも、寝たきりによる虚弱からの「NHCAP(医療介護関連肺炎)」でしょうか。人員介入が疎かになりやすいケースでは注意が必要です。

私の病院では「耳鼻科医&リハ医」は在籍していなかったため、「内科医」とのタッグでした。

2:「見えない部分」の確認で重要なこと

  • 呼吸器合併症(既往)の確認
  • 気管切開になった理由
  • VF・VEがあるか

既往歴は言うまでもなく、気管切開になった理由の把握も絶対必須です。

カニューレ対応になるケースでは心臓や肺に疾患があり、心臓オペによる「反回神経の損傷」や「気管挿管による声帯損傷」などがあります。

そこで想定できるリスクは、”声帯麻痺”です。もしも声帯が麻痺・損傷により正中位固定されていれば、痰が声帯に絡むことで窒息の危険があります。

それを知らずに「カニューレ離脱」をすればアウト。従って、VF・VEの無い病院では慎重さを求められます。

【頸部聴診法】VFのない病院での嚥下評価でSTが意識していること
VFのない病院での嚥下評価、とくに頸部聴診法について意識している3つのことを書いていきます。

»【頸部聴診法】VFのない病院での嚥下評価でSTが意識していること

かづお
かづお

事前の確認を怠らずに!

【症例報告】カニューレ離脱に必要な条件【中間評価】

自身の経験と医療的な手順を、おおまかに記します。

カニューレ離脱および、スピーチカニューレへの条件

学研の専門書によると全身状態の安定、酸素化不要、JCSⅠ桁、離床が可能の4点が挙げられています。

そのほかの詳細も書いておきます。

 バイタル・呼吸機能の安定

  • 自発呼吸を安定して行えるか
  • 酸素飽和度が適切な範囲にあるか
  • 咳嗽力は保たれているか
  • (内筒を外し)気管孔を塞いでも呼吸は楽か

 気道・口腔のクリアランス

  • 肺炎兆候がないか
  • 吸引する痰の量が少ないか
  • カフ脱気後、昼夜通して問題ないか
  • 口腔内は清潔かどうか

 身体・嚥下機能

  • 下肢筋力」は保たれているか
  • 座位の姿勢は取れるか
  • 経口摂取の前後で変化はないか
  • 自力摂取できるか

今回の症例さんでは、これらの項目をチェックして、スピーチカニューレへ移行しました。

カニューレ離脱への流れを説明しているサイトがあります。

気管カニューレの抜去 | ドクターサロン68巻3月号 | 2024年発行分バックナンバー | ドクターサロン | 杏林製薬 医療関係者向け情報
山内 急性期病院から療養型病院や施設に、ご質問にあるような患者さんが送られてく...

» カニューレの抜去(稲川先生)|ドクターサロン

【症例報告】スピーチカニューレ後のリハビリと対応

入院から、概ね3週間程度で『スピーチカニューレ』に移行しました。

スピーチカニューレ後の「リハビリ」

  • 吸引で痰量確認
  • ベッドサイドでの呼吸リハ
  • スピーチバルブにて発声ex
  • 車いす移乗、呼吸、発声
  • トロミ水、ゼリー、固形物

トロミ水2~5mlを随意 → 自由嚥下、FTと段階を上げて、着色水テストで気道分泌物の確認も行いました。

かづお
かづお

カフ圧はクリアリング次第で脱気。

呼吸・発声訓練の詳細

  • 胸郭の徒手的なアシスト → 深呼吸の促し
  • 吸気時はカニューレ孔解放 → 呼気時に孔を塞ぐ
  • ベッド座位、咳嗽訓練
  • スピーチバルブで孔を塞ぎ、発声訓練
  • 「母音→破裂→摩擦・弾音」へと誘導

スピーチカニューレ後の「対応」

3日後には日中帯、そして1wで24時間カフ脱気での生活を病棟に申し送りました。

嚥下は「軟飯、軟菜」を3食自力、ベッドサイドおよび昼は食堂で対応。

その状態で酸素化をはじめとした、諸々の問題が生じなければ「ウイニング(離脱)」だと考えました。

病棟との連携が欠かせない

諸々の問題の一つが「肉芽形成」ですが、今回の症例さんでは生じませんでした。意外と注意なのは、患者さんが『動けるようになった後』です。

カニューレが粘膜に当たり「肉芽形成」や「出血」が生じることがあります。

怪しい色の痰や、血色痰などは直ちに、医師・病棟に連絡です。

それと、スピーチカニューレ後に嗄声(湿声も)が続くようなら注意です。声帯の状態によっては「声帯麻痺+痰」による下気道閉塞のリスクがあります。

基本的には「リハビリ=回復」とは考えず、評価の連続だと考えてください。

【症例報告】カニューレ離脱直前、直後の状態【最終評価】

最終評価

入院後3週間でスピーチカニューレ → そこから約2週間後に「離脱」しました。

  • 食事は3食車いすで自力摂取
  • 軟飯・軟菜(年齢考慮)
  • トロミなし
  • G1.5 R1.5 B1 A1 S0

車いす自走、トイレは見守りなど、ADLは一部改善。

その後の対応

離脱後は数回程度、再評価を行いSTは終了。PTに後方をお任せし、身体機能の向上に努めてもらいました。

カニューレ離脱後、しばらくして「閉塞性動脈硬化症」の悪化がありましたが、ST領域への問題は生じませんでした。

この患者さんとの思い出はこちらで語っています。

カニューレ患者さんとの思い出|かづお
「娘にありがとうと言いたいかな」 思い出の患者さんとのリハビリ噺し。 地域密着系である当院では、系列の介護ホームから頻繫に搬送されてくる。そのほとんどは80歳以上で認知症や寝たきりなだけに、”目をみて会話できる”人というのは珍しかった。 7...

» カニューレ患者さんとの思い出

【参考書】カニューレ患者対応に持っておきたい必読書

2冊ご紹介します。
今回の症例にも役立たせて頂いた、最高の2冊です。

カニューレ対応前に必ず目を通しています。STでも、看護レベルの本を1冊は所持したいところ。

こちらはWEB動画付きで嚥下技術を学べる1冊。テキストだけじゃ深まり難い分野だけに、こういった参考書があると助けられます。

では。