失語症訓練でメジャーな『音韻・意味セラピー』の文献を調べてまとめてみました。
要点を得られるように記してあります。お役立てください。
発話訓練に悩むSTには必見です!
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【失語訓練】音韻&意味セラピーについて調べてみた【文献情報】
「音韻・意味セラピー」とは、失語症状の機能に焦点をあてた訓練法です。
例えば、意味機能に障害があればそこに『ターゲット』を絞り、リハビリしていく…といった技法です。
ターゲットを絞る理由は、失語症の回復プロセスが『音韻・意味機能の回復(Lambonら)』とされており、その機能改善にむけた合理的な治療のためだと考えられます。
症例1.音韻セラピーの実際【文献の実例より】
セラピーの実例を文献より、要約してお伝えします。
評価:音韻セラピー
『音韻障害』を認めた、50代の右利き男性(高校中退)。
- 左頭頂葉皮質下性出血
- リハは発症から1.5ヶ月後より
- 右片麻痺
- 流暢型失語、失行、右半側空間無視
文レベルの自発話に著しい呼称障害(2/20)。復唱は単語から不確実で、音読は仮名単語の一部を除いてほとんど正答せず。
(掘り下げ)検査上、重度の音韻障害と良好な意味機能が示唆されました。
訓練①:音韻セラピー
訓練内容は、絵と文字の同時提示して、確実に復唱可能なモーラ数を「くり返し復唱」するところからスタート。
4モーラ語になると困難を呈したため、鉛筆なら『えん』と『ぴつ』のように、生産できるモーラ数に分けて、別々に復唱させた。
確実に復唱可能となったところで「えん」と「ぴつ」を結合させ「えんぴつ」と生産させる。
これを「blending課題」というようです。
うーん、勉強になります。
訓練②:音韻セラピー
復唱が確実となった時点で、復唱の前刺激後に「音読」→「呼称」へと促す。
経過とともに仮名一文字の音読が可能となったため、途中から復唱ではなく音読に変更。
音読は「仮名→漢字→呼称」へと切り替えた。
音韻セラピーの「結果」
訓練開始から3.5か月後。
- 呼称:2/20→16/20
- 復唱:2文節レベルは不確実ながら可能
- 音読:短文レベル
自発話については「そのまんま東」などの多音節かつ実質語の生産が豊富に。
音韻性錯語は残存するも、ターゲットを同定し得る語へと変化したようです。
症例2.意味セラピーの実際【文献の実例より】
つぎは「意味セラピー」の実例をお伝えします。
評価:意味セラピー
『意味障害』を認めた、50代の右利き男性(大卒)。
- 左中大脳動脈領域に広範な脳梗塞
- リハは発症から2ヶ月後より
- ごく軽度右片麻痺
- 中程度流暢型失語、構成障害、右半側空間無視
呼称の誤反応(16/20)は大半が意味性錯語で、語頭音ヒントでの促通は不確実。
復唱&音読はいずれも短文レベルで、概ね7~8割の正答だが、必ずしも理解を伴わなかった。
(掘り下げ)検査上、音韻は保持されながら、意味機能の障害が明らかになりました。
訓練①:意味セラピー
訓練では、ターゲットとなる語のマッチング課題(絵と単語など)をさせ、更に「カテゴリーごとに単語を分類」する課題をおこなった。
症例の回復過程に合わせて、異なるカテゴリーから『意味的に類似したカテゴリ』へと課題難度をコントロールした。
異カテ→同カテ。
訓練②:意味セラピー
文献では『odd課題』を用いていました。
- odd picture out
絵の中にある「仲間外れ」を削除する - odd word out
合わない「単語(文字)」を削除する
たとえば「ズボン・靴下・みかん」のような刺激提示です。
ほかには以下のような訓練も行っていました。
- 反対語課題(例:老人ー若者)
- Yes/No判断課題(例:苺は田んぼで採れる?)
意味セラピーの「結果」
退院時には会話での錯語や各課題での誤りは軽減したとのこと。
ただし、この患者さんとのリハ期間は短く、そのため経時的な変化は確認できなかったようです。
【SFA】喚語したい単語を「意味属性」ごとに考える訓練
別の文献ですが「SFA」と呼ばれる『単語の周辺情報を想起』して喚語をうながす意味セラピーもあります。
たとえば「みかん」を喚語したい場合、みかんについての意味属性をSTが用意します。
意味属性は口頭で回答してもらい、その後、用紙に記述してもらいます。
意味理解力の向上させる技法ですね。
参考文献:日本語慢性期流暢性失語症 2 例への Semantic Feature Analysis (SFA) による呼称訓練の効果
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ではー。