嚥下時の「姿勢調整」を記した文献を調べてまとめてみました。内容はシンポジウムでの検討です。
一見正しいと思える姿勢調整ですが、実際は「対応次第では危険性もある」ことが学べます。
正しい嚥下臨床にお役立てください。
【文献】嚥下リハの姿勢の意味や効果を調べてみた
姿勢調整の目的は、「重力や空間を操作して、食塊の通過経路や速度を変化させ、誤嚥を防ぐこと」とされています。
文献では、姿勢調整によって約8割の患者さんで誤嚥が軽減したとの報告があります。
その一方で、姿勢調整のすべてが正しいとは限りません。
本稿では、「リクライニング座位」「頭部回旋」「頭頚部の屈曲」の重要ポイントと、注意点を解説しています。
リクライニング座位
リクライニング座位は、床面に対する体幹の角度調整で「食塊移送を促進する」方法です。
適応患者の例
- 食塊の送り込み障害
- 嚥下反射惹起遅延
- 食物の移送に嚥下が間に合わない
咽頭から食道は緩やかな傾斜になり、食塊は咽頭後壁をつたわりやすく、誤嚥リスクが低減します。
ただし、「角度によっては咀嚼効率が低下する」という報告もありますので注意。
頭部回旋
頭部回旋は、頭部を左右に回旋して回旋側の梨状窩を狭め「反対側の咽頭に食塊を誘導」する調整法です。
適応患者の例
- 咽頭機能の左右差
- 一側性の喉頭不全
- 喉頭閉鎖、食道入口部開大不全
注意したいのが、「リクライニング位と頸部回旋の単純な組み合わせだけでは、誤嚥のリスクがある」とする報告もあります。
頭頚部の屈曲
頭頚部の屈曲は「顎引き、うなずき」などと言われますが、文献では「顎を胸の方向に引く(頭部屈曲位)」で報告しています。
適応患者の例
- 喉頭閉鎖が不十分
- 喉頭閉鎖のタイミング遅延
注意したいのが、「顎を引くことで咽頭収縮力が低下し、食道入口部の開大が阻害される」という報告があります。
梨状窩残留を認める患者では注意。
その姿勢、危ないかも?

臨床では、「リクライニング座位」に「頭部回旋」を加えるなど、複合した姿勢調整を行うことがあります。
しかし文献では、単純に姿勢を組み合わせることで、「かえって誤嚥リスクが高まる可能性」が示唆されています。
「複合姿勢」は誤嚥リスクが高まる?
「リクライニング座位+頭部回旋」を組み合わせることで、食塊の通過経路が変化し、かえって誤嚥リスクが高まる可能性が示されています。
嚥下時に、喉頭挙上・声門閉鎖が不十分な場合、誤嚥につながる危険性があります。
正しい複合姿勢を考える
重力と空間をともにコントロールしたい場合は、「食塊を誘導したい咽頭側に体幹を回旋させる」ことを検討します。
つまり、頭部は正中位のまま、体幹のみを回旋させる方法です。

でも、臨床ではどうすればいいの?
「Swallow Chair」を活用してみる!
「頭部は正中位のまま、体幹のみを回旋させる姿勢」への支援策として、「Swallow Chair」が紹介されています。

» 嚥下時の姿勢調整における評価訓練用椅子の有用性|Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science
この支援機器を用いることで、体幹の回旋を簡便に設定でき、左右いずれかの咽頭へ効率よく食塊を移送できるとされています。
リクライニング座位は「咀嚼効率」を下げるかも
通常、私たちは座った状態で咀嚼しますが、リクライニング位では「重量の影響」を受け、普段とは異なる嚥下動態になります。
別の文献では、「リクライニング位では咬筋の筋活動が小さい」と報告されています。

咀嚼効率が下がる可能性あり!
理学療法の文献でも、「30°と90°」のリクライニング位で有意差が認められています。
» 健常者の体幹および頭頸部の姿勢変化が咀嚼の効率に及ぼす影響|理学療法科学
姿勢調整は患者によりけりの「対応」を
評価上、誤嚥リスクが少なく、咀嚼に問題がある患者さんでは、リクライニング位よりも座位に近い姿勢のほうが咀嚼効率がよいことが示されています。
そのため、固形物をスタートする際の姿勢を考えるうえで、ひとつのポイントになりそうです。
とはいえ、嚥下障害は「複雑な病態」です。
あくまでひとつの視点としてお考えください。
嚥下の評価力を高める「文献」のご紹介
STには欠かせない「VF評価」について、文献をもとに要点をまとめました。
VFの読影ポイントを、簡潔に学べる記事です。ぜひ参考にしてみてください。

