嚥下時の『姿勢調整』を記した文献を要約してみました。内容はシンポジウムでの検討です。
この症状にはこの姿勢で対応!といった感じに、要点を記してあります。お役立てください。
嚥下の姿勢調整に悩むSTはどうぞ!
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【姿勢調整】嚥下リハの姿勢の意味や効果を調べてみた【文献情報】
姿勢調整の目的は『重力や空間を操作して、食塊の通過経路&速度を変化させ、誤嚥を防ぐ』ことだとされます。
姿勢調整には「リクライニング座位」「頭部回旋」「頭頚部の屈曲」の3つを解説しており、重要なポイントが記されていました。
参考文献:シンポジウム|摂食嚥下障害領域における姿勢調整の検証
1.リクライニング座位
リクライニング座位は、床面に対する体幹の角度調整で「食塊移送を促進する」方法です。
適応患者の例
- 食塊の送り込み障害
- 嚥下反射惹起遅延
(食物の移送に嚥下が間に合わない)
咽頭から食道は緩やかな傾斜になり、食塊は咽頭後壁をつたわりやすく、誤嚥リスクが低減します。
ただし、角度によっては『咀嚼効率の低下』があるという報告もありますので注意。
2.頭部回旋
頭部回旋は、頭部を左右に回旋して回旋側の梨状窩を狭め「反対側の咽頭に食塊を誘導」する調整法です。
適応患者の例
- 咽頭機能の左右差
- 一側性の喉頭不全
- 喉頭閉鎖、食道入口部開大不全
リクライニング位と頸部回旋の単純な組み合わせだけでは『誤嚥のリスク』があると報告されています。
3.頭頚部の屈曲
頭頚部の屈曲は「顎引き、うなずき」などと言われますが、文献では「顎を胸の方向に引く(頭部屈曲位)」で報告しています。
適応患者の例
- 喉頭閉鎖が不十分
- 喉頭閉鎖のタイミング遅延
顎を引くことで咽頭収縮力が低下し『食道入口部の開大が阻害』されるという報告があり、梨状窩残留を認める患者では注意。
その姿勢「複合」しても大丈夫?【回答:危険性もある】
臨床では「リクライニング座位」に「頭部回旋」など、”複合”した姿勢調整をすることがあります。
ですが、単純な姿勢の組み合わせは『誤嚥リスクの可能性』があること教示しています。
複合姿勢の「検討&調整」
文献では複合姿勢として「リクライニング座位と頭部回旋」を単純に組み合わせた場合の検討をしていました。
そこでは食塊の多くが回旋側の梨状窩に貯留後、反対側の梨状窩に押し上げられ、食道へ至るという報告がありました。
リクライニング座位のみでは「座位60°~45°」と次第に後傾になるにつれ、誤嚥が軽減された一方で「複合姿勢ではかえって誤嚥のリスク」があるとしています。
では、複合姿勢はどうすればよいのだろうか?
重力と空間をともにコントロールしたいときは、「食塊を誘導したい咽頭側に体幹を回旋させる」ことを検討してます。
つまり『頭部は正中のまま、体幹のみを回旋させる』対応ということです。
でも臨床ではどうやればいいの?
そこで「Swallow Chair」を活用してみる
「頭部は正中のまま、体幹のみを回旋させる」姿勢の支援策として「Swallow Chair」を推進しています。
この支援機器により、「体幹の回旋」が簡便に設定でき、左右いずれかの咽頭に効率のよい移送が行えるとのことです。
【重要】リクライニング座位は咀嚼効率を下げる!?
通常、私たちは座った状態で咀嚼しますが、リクライニング位では「重量の影響」を受けるため、普段とは異なる嚥下動態になります。
べつの文献では『リクライニング位では、咬筋の筋活動が小さかった』という報告があります。
「咀嚼能率」が下がる可能性が示唆!
理学療法の文献でも、リクライニング位「30°と90°」との間に有意差があるとしています。
参考文献:健常者の体幹および頭頸部の姿勢変化が咀嚼の効率に及ぼす影響
姿勢調整は患者によりけりの「対応」を
評価上、誤嚥リスクが少なく、咀嚼に問題がある患者であれば、リクライニング位よりも「座位に近い姿勢」のほうが咀嚼効率がよいことが示されています。
このことは座位姿勢で『固形物をスタートするときのポイント』になり得るでしょう。
とはいえ、嚥下障害は「複雑さが絡む病態」なので、それぞれに適した対応が、治療のカギですね。
嚥下評価力を高める「文献」のご紹介
STには欠かせない「VF」評価の文献を、わたしのほうで要約してみました。
サクッと学べるおススメの記事です。
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ではー。