言語聴覚士として働いていると、続けるか辞めるかを考える瞬間が来ると思います。
キャリアアップの転職ならよいのですが、「とりあえず転職したい…」という動機だと注意が必要です。
私の経験を通して、STはどんな環境で働くべきなのか、語りたいと思います。

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言語聴覚士は「リハビリの仕事が理解される環境」で働いた方がいい
ちょっと現実(残酷な)はなしをします。
医療職のすべてが患者を前向きに扱うわけではありません。
このことを踏まえたうえで、お話しをしていきます。
維持期だと、リハビリは受け入れられない?
私たちは患者さんの回復を願い、リハビリ(re-habilitation:再びもとに戻る)を行います。
ですが維持や終末期など、生命の終わりに向かうステージだと「再びもとに戻る」という本来のリハビリテーションとは、方向性が異なることもあります。
たとえば、食形態を一段階上げたことで、ナースから「余計なことをしないで!」と怒号を飛ばされる…そんな悲しい経験されたSTは多いかもしれません。
これは看護師さんらが悪いわけではありません。病棟の管理体制やステージ上、方向性が食い違うことはあるんです。
新卒のSTや、はじめての転職だと困惑
そんな体験をすると、新卒や初めて転職したSTにとっては大きなショックでしょう。「STって本当に理解されない!」と嘆く後輩もいました。

いや…違うんだよ。
しかし、実際には理解されていないわけではありません。STにできることは短期的な範囲に限られ、長期的な管理を担うのは、多くの場合リハビリ職以外のスタッフです。
チーム体制や在宅医療のインフラが整っているケースは稀であり、STの意に沿わない方向性であっても、その判断をSTだけで決定することはできないのです。
リハビリに精通した環境でないと、やる気を失う
リハビリで最もやりがいを感じるのは「回復期」です。臨床経験を積み、多くの仲間ともリハビリを語れます。嚥下であれば急性期も同様です。
一方、リハビリの優先度が低い現場では経験が限られ、つい不安が頭をよぎります。

STって必要なのかなぁ…。
口腔ケアや検査報告に終始する日々には充実感が得にくく、やりがいを見出しにくい環境では仕事自体が薄っぺらく感じられてしまうこともあります。
しかし、だからといってSTという職業そのものが本当に薄っぺらい仕事なのでしょうか。
STがつまらないと感じたら、それはあなたのせいじゃない
言語聴覚士の専門性はさまざまなだけに、おなじSTからも理解されないことがある――。
とある元言語聴覚士の発言「STは誰でも出来る」
とある元言語聴覚士が「STの仕事はだれでも出来る」と言いました。
その方はSTを10年続けられた方で、新卒からSTに関心がなかったようです。
とても悲しい発言ですが、きっとこの方は「STを表面上」でしか経験してこれなかったんだと思います。

正直、STは誰でも出来ません。
フリートークひとつ取って見ても、評価と治療を網羅的に繰り返す高度なリハですが、素人目線ではただの会話に映るのでしょう。
誰にでも出来そうな分野であっても、最終的にプロと素人では質に大きな差が生まれます。
おそらくその人は「誰でも出来る仕事」と思えるような、学びの薄い職場環境だったのではないかと思います。
もし環境が違えば、STは楽しくなるのか
こたえは「Yes」だと思います。
わたしの先輩で進路上、致し方なくSTになった方がいます。STに深い興味はなかったようですが、その方は10年以上キャリアを積んでいます。
いまでは「楽しいよ」と言っていました。新卒で就いた職場を聞いてみたら有名なリハ病院でした。つまり、環境に恵まれていたんです。
逆にどんだけ熱量がある人でも、劣悪な環境では「STなんて辞めたれ!」と考える人だっています。

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わたしが一時期そうでした(汗)
すこし話をまとめます
- 関心がなければ続かないし
- 関心がなくても続く人はいる
- 熱意があっても辞める人はいる
じつはこの3つには共通点があります。そう、環境です。
先述した10年のキャリアを持つ2人とも、同じようにSTに関心がなかったわけですが、その将来は違いました。
もちろん個人差はありますが、環境が「性格や考え方」に何らかの影響を与える可能性は十分に考えられます。
それこそ、どこで働くのか次第で私たちのキャリアは決まってくるんです。
言語聴覚士を「理解する職場」に身を置こう
餅は餅屋、花は花屋、というやつで、就くならリハビリに特化していて、STに理解のある職場に勤めべきでしょう。
リハビリはその業態的に、リハビリを非専門とする病院やクリニックでも募集しています。もし転職するにしてもきちんと下調べしてから就くべきです。
それだけに、療法士が活躍できる環境は実は限られているのかも知れません。
リハビリテーション医療はチームプレー。
リハビリ医、看護師、介護士、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど、各領域のプロフェショナルが一丸となり、持てる力を尽くさなければ、理想のリハビリテーションは行えないと確信しているからだ。
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言語聴覚士を「チーム力」として専門的に扱う職場に身を置くことが、私たちの運命を左右すると思うのです。
ではー。